英雄の天意~枝葉末節の理~
「黙れ」

「人であり続けたいと思うなら、お前は俺には勝てない」

「……黙れ」

「人間に何の価値がある!?」

 薄汚く惨めで愚かな、地面を這い回る虫けらどもだ。

 あんな奴らの仲間だったことがどれほど恥であったのか。

「──っ黙れ!」

 ラーファンの剣を薙ぎ払い数歩後ずさる。

 荒い息を整えながら眼前の友を睨みつけた。

「人でいたくて強力な魔法も避けていたくせに」

 湧き出る力を抑えようと抗えば抗うほどに体内でそれは荒れ狂う。

 解放してしまえば楽になる。

 しかしそれは、人でなくなるという事に他ならない。

「俺に従えば、お前はそのままでいさせてやるよ」

 旧世界の神として生きればいい。

 苦しいなら俺が抑えてやる。

 そんなラーファンの甘言は少なからずナシェリオの心を揺るがせた。
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