英雄の天意~枝葉末節の理~
 しかし、地中を流れていたマナはいつしかその流れを変え、豊かだった大地は瞬く間に衰えていったと謂われている。

 確かに、西の大地には大きな森はない。

 しかれど、叙事詩に描かれたその国の場所は明確ではなく、本当にあった都市なのかも定かではない。

 そうしてナシェリオは知らぬ間に平原を見渡せる丘に立っていた。

 空は灰色の雲で覆われ、今にも降り出しそうな様相を呈(てい)している。

 どうすればいいのかと天を仰いでふと、何かの気配に眉を寄せた。

 振り向くと、数人の男が下品な笑みを浮かべて近づいて来ている。

 迷い込んだ旅人などを襲う野盗がいるとは聞いていたが、初めて目にする姿に嫌悪感を募らせる。

 男たちは目先で立ち止まり、無表情に見つめているナシェリオを品定めするように丹念に眺めた。
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