英雄の天意~枝葉末節の理~
「頭は良くないとはいえ、俺の身長の倍ほどはあったからな」

 鱗の無い体は艶のある漆黒の硬い皮に覆われ、岩を砕くほどに強靱な長い尾と恐怖を駆り立てる蝙蝠に似た大きな翼、そして炎のごとき真っ赤な瞳は怒りに満ちていた。

 気持ちよく寝ていたところをたたき起こされ、執拗に攻撃をされれば怒りもするだろう。

 しかし、このドラゴンは夜な夜な黒い翼をはばたかせ旅人を襲っている凶暴なドラゴンだ。

 それを退治したとなれば、さすがの領民も息子を認めるだろう。

 それに付き合わされる側はたまったものではないが報酬を頂けるとなれば話は別だ。

「で、見事に倒して終わり。道楽息子は手柄を立てたって訳さ」

 随分と唐突に終わらせたことにナシェリオは眉を寄せた。

 話す事が面倒になったのか、それとも今更、自分の手柄だと自慢するものではないからだろうか。
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