センチメンタル・スウィングス
「・・・あ」

まさか今日、ここで学(まなぶ)さんに会うなんて・・・。
当たり前だけど、向こうもそうは思ってなかったようで、偶然でも私と再会したことに対して、驚きと狼狽えた表情を隠すことが、一瞬遅れた。

それでも学さんは、すぐ笑顔を浮かべると、「久しぶり」と私に言った。

この人とつき合っていた頃は、屈託のない彼の笑顔を見ただけで、ほんわり温かい気持ちに包まれた。
だけど、婚約を破棄して、ううん、させられて、6年会わなかった間に、そんなときめきは、私の中からきれいサッパリ消え去っていた。

だから私も、元婚約者(まなぶさん)に対して、飾らない笑顔を向けることができた。

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