センチメンタル・スウィングス
それから私は、「大丈夫だった」と母(父は仕事中)に報告するため、実家へ行った。
病院から実家へは、車で行けない距離じゃないし。
何より、スマホで言うだけより、実際元気な姿を見せたほうが、お母さんも安心すると思う。

とは言っても、実家へは先週も行ったんだけど。

それでもお母さんと、両親が飼っている、ミニチュアダックスフントのベニーは、いつもどおり私を歓迎してくれた。



そして炬燵に入った私は、みかんの皮を剥きながら、転移も再発もしていないとお母さんに報告した。

「そう。よかったわねぇ」
「うん」と私は言いながら、みかんを一つ、パクッと食べた。

「やっぱり炬燵はあったかいねー」
「桃ちゃん、背中が丸くなってるわよ」
「ついね・・・。学さんに会った」
「え?どこで」
「病院の駐車場。奥さんの妊婦健診に付き添いだって」

私は淡々と言いながら、またみかんを食べた。

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