センチメンタル・スウィングス
「私、一度出血すると、止まりにくい体質なんですって」
「病気の影響か」
「それは分かりません。小さな切り傷程度なら問題ないんですけど・・・出産は出血多量になるリスクがかなり高いから、できれば止めておいたほうがいいと、先生に言われました。できないことはないけど、病歴もあるし。だから私、子どもは生まない。そんな、色々面倒くさい私と、誰もつき合おうとは思わないでしょ?まして結婚となると、ね」

ここまで詳しく話したのは、和泉さんが初めてだけど・・・きっとこれで引くはず。
「俺たちの恋愛は、もう始まってる」じゃなくて・・・「最初から終わり」だ。

「だから今の私は、小説や映画といったフィクションと、何年も前の過去の恋愛経験からしか、アドバイスできないんです。しかも過去のリアルな恋愛体験を通して分かったのは、永遠の愛なんてないんだということなのに。それでも・・・」
「いいんじゃね?」と和泉さんは言うと、椅子から立ち上がった。

「そろそろ帰るか」
「・・・はい」

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