らぶ・すいっち





「そういえば今日、順平先生はお休みを急にとったらしいのだけど、実はお見合いに出かけているっていう噂よ」
「そうそう。なんでも英子先生の昔からのご友人のお孫さんらしくてね」
「順平先生最近失恋しちゃったらしいのよね−。やっぱりショックだったのかしらね。反動でお見合いを引き受けたらしいのよ」
「あら、私もその話聞いたわ。失恋の特効薬は新しい恋だし、このまま結婚しちゃうかもしれないわね」


 おば樣たちの会話はまだ続いている。だけど途中から何も聞こえなくなってしまった。


(順平先生がお見合い……? 失恋したって……もしかして)


 順平先生にキスをされ「スイッチが入りましたか?」という質問に返事をすることなく逃げ出してしまった私。

 もしかして、そのことが原因で順平先生がお見合いをする決意をしたとか……?
 もちろん、順平先生が私のことを好きだったという仮定の下での話だけど。


「はい、授業をはじめますよ。用意はいいですか?」


 教壇に立つ英子先生の声が聞こえたが、私はどうしてもその場を動くことができなかった。






< 106 / 236 >

この作品をシェア

pagetop