らぶ・すいっち




「そうですね、久しぶりですね」


 順平先生の他人行儀の声は、やっぱり冷たく感じる。
 しかし、牧村さんはそんな順平先生の態度にも負けず、色気たっぷりにほほ笑んだ。


「今日は英子先生はお見えにならないの?」
「ええ。今日は私と、彼女の二人です」


 突然私に話を振られ、慌ててしまう。
 牧村さんは、私を見て値踏みをするような視線をしたあと、ニッコリとキレイに笑った。

 しかし、私にはわかった。
 牧村さんは私を見て“自分より魅力的ではない”と判断したことを。

 確かに色気もスタイルも牧村さんの方が上だろう。それは認める。
 だが、初対面の相手にこんな失礼な態度をとるだなんて。私は内心良い気持ちはしなかった。


「そちらの方は生徒さん? こんにちは。初めまして」
「こんにちは」


 お互い一応社会人。本音と建て前は分けて使うべきだし、当たり障りなく挨拶をするのも常識であろう。

 私は内心苛立ちを覚えたが、それを押し隠した。
 牧村さんは、とりあえずの愛想はついたと判断したのか。再び順平先生に向き直った。


「順平先生が若い生徒さんを連れてくるなんて初めてじゃない?」
「そうかもしれませんね。公私混同ですから」
「「え?」」


思わず私も声を上げてしまった。牧村さんなどは、つけまつげをつけた目を大きく見開いている。
 もちろん私も盛大に驚いて口をポカリと大きく開いてしまった。



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