らぶ・すいっち





 牧村さんは一瞬動きを止めたが、コホンと小さく咳払いをして笑う。
 どうやら聞き間違いだと考えたようだ。牧村さんは改めて順平先生に声をかける。

 順平先生により近づき、牧村さんは順平先生の肩に触れた。


「また一緒にワインでも飲みに行かない? おいしいバーを見つけたの。私の部屋でワインを買ってきて飲んでもいいわね。付き合っていたときみたいに、どう?」


 牧村さんはチラリと私に視線を向けたあと、強請るように順平先生に甘えた表情を浮かべた。

 そのときに確信した。
 彼女は順平先生に気がある。それも二人は昔付き合っていて深い関係だったんじゃないかと推測する。


(なんだか面白くない。先生になれ慣れすぎる気がする!)


 それを咎める資格は私にはないが、胸中にどんよりと暗雲がたちこめていく。

 二人のやりとりをこれ以上聞きたくなくて俯いた私だったが、順平先生の言葉に驚いて顔を上げた。隣に座る順平先生を見ると、牧村さんを冷たく一瞥している。



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