らぶ・すいっち





 やっぱり図星だったらしい。その原因も実はわかっている。
 それはたぶん、お祖母さんなのだろう。

 美馬の家に行けば、私の祖母である英子先生がいる。
 料理教室の先生と生徒という間柄で会うぶんには抵抗はないのだろうけど、私の彼女として会うのは恥ずかしいという理由じゃないかと憶測する。

 笑顔で攻撃する私に、京は「意地悪です」と小さく呟く。
 だが、私だって負けてはいませんよ。そんなに構いたくなってしまうような表情を浮かべる京が悪いのですから。


「今日の夜はうちへ来てください。お祖母さんが腕によりをかけて夕飯を用意してくれていますので」
「えっと、その……なんで私が了承していないのに話が進んでいるんですか?」


 反論する京をサラリと躱し、私は追い打ちをかける。


「お祖母さんがすでに準備していますので、逃げることは許されませんよ? そんなにお祖母さんに会うのが嫌ですか?」
「違います! そうじゃなくて……順平先生、本当意地悪です」

 わかっていますよね、私の気持ち。と恨み節を唱える京だが、私はそんな視線をフイッと意図的に逸らし、ミルクティーを一口飲む。
 ふんわりと香るディンブラ。ミルクでマイルドになっていて、よりディンブラのよさを感じることができる。やっぱりおいしいですね。


「ほら、京ちゃん。温かいうちに召し上がりましょう」
「ううっ……順平先生、本当に私に対してだけ意地悪じゃないですか?」
「ん?」
「皆には優しいのに……」


 口を尖らせブツブツ文句を言う京に、私はとびきりの笑顔を向けた。

 言っておくが、こんなに笑顔の大安売りをするのは京、君だけなんですから。
 そこに気がつかない君も、可愛いですけどね。



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