らぶ・すいっち
「とんでもない! 誕生日でもクリスマスでもないのにプレゼントなんていただけません!」
そんなふうに渋っている京の手から買おうとしていた万年筆を取り上げ、そのままレジに直行。もちろん京の反論などに耳も貸さず、キレイにラッピングされたそれを京の手の上に置いた。
「京ちゃんがそんなに欲しいと思ったものをプレゼントさせてもらえて嬉しいですよ」
「で、でも……いただけません! そうじゃなくても紅茶だってごちそうになったんだし、この前だって」
自分だって働いているのだから割り勘で、それが京の主張ではある。
私も京の言いたいこともわかるつもりだ。
だけど、この万年筆だけは京に私からプレゼントしたい。
彼女があんなにワクワクして選んだものだ。きっと大事に大事にしてくれることだろう。
それをこれから想像するのも楽しいはずだ。
そう伝えると、やっと京は折れてくれた。そしてその瞬間、フワッと柔らかく笑った。
「ありがとうございます、順平先生。大事に……大事に使います。会社に持って行ってもいいですか?」
「もちろん」
もう一度「ありがとうございます」とお礼を言う京を見て、私は確信する。
京に渋い顔をされようが、拒否られようが今後もきっと京にプレゼント攻撃をするであろうことを。
渋る彼女を説き伏せ、ありがとうと言わせる過程。これから楽しくなりそうだ。
楽しくデートをしていた私たちだったが、夕刻私の車に乗り込んだあとの京は無口でずっと固まっている。
これから行く場所———お祖母さんがいる美馬家———でのことを考え、緊張しているのだ。
何度も大丈夫だよ、と優しく諭したのだが……やっぱり緊張はするらしい。
ぎこちなく靴を脱ぐ京を見て、ほほ笑ましくて笑みを浮かべてしまう。