らぶ・すいっち
「おや、須藤さん。上手に包丁を扱えるようになりましたね」
「せ、先生!」
そんな不意打ちのように背後から声をかけないでください。慌てて包丁をまな板の上に置くと、わざとらしいセリフを言う順平先生を振り返った。
“貴方が私に教えたんでしょ?”と、目で訴えてみたが、相変わらず順平先生は食えない人。素知らぬふりをして、私が剥いたジャガイモを手に取った。
「うん。きちんと原型をとどめていますね」
「大丈夫です!! やればできる子なんです」
「ふふっ。これならちゃんと肉じゃがを作ることが出来そうですね」
「っ!」
相変わらずイヤミたっぷりで私をからかう順平先生に、グループのおば様たちがニヤニヤと笑いながら会話に入ってきた。
「あら、順平先生。この頃は京香ちゃんを弄ることができなくて寂しそうね」
「そうそう。京香ちゃん、包丁使いがうまくなったから。苛められなくなったんでしょ?」
おば様たちは、私と順平先生を交互に見つめてニタリと笑う。その笑みが恐ろしすぎて、私は逃げたくなった。
なんだろう、おば様たちの意味ありげな笑みは。何かを掴んでいる、そんな様子がヒシヒシと伝わってくる。
そのことに順平先生も何かを感じたようだが、いつも通り飄々としている。
しかし、その順平先生の顔色を一瞬変えるほど、おば様たちの強烈な攻撃が飛んできた。