らぶ・すいっち




「元彼女です」
「へぇ……で、元鞘に戻るってわけか?」
「そうなるように仕向けて行く予定っす」


 ニッと笑う合田くんの笑顔を見て、私はカァッと身体が火照ってしまった。

 合田くんまで何を言い出したのか。
 ますます慌てる私を見て、宇佐見さんまでもが意味ありげにほほ笑んだ。



「それじゃ邪魔者は退散することにしよう。須藤さん、ゆっくりしていってね」
「あ、えっと! う、宇佐見さん」

 このまま合田くんと二人きりだなんて、どうしたらいいのかわからない。
 そうでなくても、数時間前に順平先生に言われた言葉とキスのせいで頭がショート気味なのだ。

 これ以上、私を悩ます案件が増えてもらっては困る。

 
(だ、大丈夫だ。合田くんも冗談で言っているだけだろうし)


 元彼氏、元彼女という間柄ではあるが、大学生になる春。私たちは話し合いの末、お互い違う道を歩いて行こうと決めた。
 それからもう何年たっただろう。時効だといってもいいほど月日は経っている。

 いくらなんでも、今さら合田くんが私とよりを戻そうとするだなんて考えられない。
 きっと宇佐見さんには冗談で言っただけなのだろう。

 大丈夫だと心の中で唱えるのだけど、合田くんの視線に熱っぽい何かを感じてしまっては平常心でいられるわけがない。

 居たたまれなくなって、慌てて料理に手をつける私。
 それを見て、なにやら楽しそうに笑う合田くんの表情。

 異様な雰囲気で食事をする、元恋人同士は対照的である。



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