Fun days

恋人

…恋人かあ。

大崎の言葉が引っかかって、ずっと村田は考えていた。

美桜と恋人同士になったら、どうなるんだろ。
美桜は俺のことを好きで。
恋人同士が色々とすることは、しちゃってて…
ふふふ…
男の幼馴染…気にはなるけど、
本を貸すくらい、いいかあ…

妄想が止まらなくなり、村田は手で顔を覆う。

「村田、写真集持ってきたよ」

浸っている村田に美桜が声をかける。

「あ、ありがとう」

自然な笑顔を装うが、にやけてしまう村田。

「昨日の本も、今度持って来るね。
 幼馴染も持っている本だったから」

「え、そうなんだ…」

美桜、悲しくなかったかな。
せっかく貸そうとしてたのに。

心配する村田をよそに、大崎が美桜に聞いた。

「ねえ、美桜って好きな人いるの?」

突然の質問に、驚いた様子の美桜。

「…い、いないよ。」

戸惑い気味に答える。

「へー、そうなんだ」

ちらっと村田を見て、にやりとする大崎。

喜びそうになるのをこらえる村田。

「でも美桜は、誰ともつきあう気はないんでしょ」

冷ややかに和美が言った。

固まる村田。

「…うん」

目をそらしながらも、美桜ははっきりと答える。

「なんで?」

すかさず大崎が聞く。

「…今は色々やりたいことがあってね。
 恋人にかける時間は無いな、と思って」

大崎がちらりと村田を見る。
明らかに落ち込んでいる。
さっきまで、美桜と恋人になった気分でいたからなあ。
俺も焚きつけたし。

「でも美桜に好きな人ができれば、
 その気持ちは変わるよね?」

責任を感じて、フォローを入れようとする大崎。

「うん。本当に好きな人ができれば、
 付き合いたいと思うよ」

美桜は村田を見ずに言う。

不憫に思ったのか

「ま、大学生活、始まったばかりだしね」

和美も村田に気を使う。

そんな言葉が耳に届いているのかいないのか、
村田は呆然としたままだった。
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