Fun days

スポーツ

英語の授業を受けながら、美桜は考えていた。

体育館で何を撮ろう…
バスケットゴール。
転がったままのボール。
置き去りにされたシューズ、なんてのもいい…
危うく、にやけそうになる。

バスケしているところを撮るのも、楽しみだなあ。
スポーツは撮ったことがない。
人物写真自体、談笑している友達とか
ジャズ研の演奏風景とか
動かない人ばかりだもんなあ。

…って、撮れるのかな?私。
村田のエアバスケ、撮れなかったじゃん。
シャッタースピードを変えただけで、撮れるのかな?
…やばい、昼休みに吉岡さんに聞こう。


そして、昼休み。
美桜は早々に食事を済ませて
写真研究会の部室にやってきた。

「バスケの写真撮りたいんですけど、
 コツとかありますか?」

吉岡に聞く美桜。
村田との約束の時間は午後3時。
まだ時間はあるけど、何となく焦る。

「おお。いいねえ。バスケ。
 …甘酸っぱいなあ」

言いながら、吉岡は箱を取り出す。
甘酸っぱい?と思いながら、吉岡と箱をのぞく。

「被写体が遠くなるから
 望遠レンズがあったほうがいい。
 貸してあげるよ。」

吉岡は、箱から望遠レンズを取り出した。

「美桜ちゃんのカメラ貸してみ」

美桜は鞄からカメラを取り出し、吉岡に渡す。

「シャッタースピード、はやくしておくね」

吉岡は美桜のカメラの
シャッタースピードダイヤルをまわす。

「レンズもつけとくよ」

望遠レンズを
迷いなくカメラにつける吉岡の手。

「あとは、とにかく撮るしかない。
 練習だと思って、たくさん撮ってみな」

カメラを美桜に渡して、吉岡は言った。

美桜は望遠レンズがついて
ごつくなった自分のカメラを見つめて

「練習で、何か動くものを撮ったほうが
 いいですかね…」

吉岡に聞いてみる。
何だか不安だ。

「んー。スポーツはそれぞれの動きがあるから
 他のものを撮っても、練習にはならないかもよ」

タバコに火をつけながら、吉岡が言った。

そっかあ。
がっかりする美桜。

「美桜ちゃん。ギター弾いてる子も
 しゃべってる子も、少しは動いていただろ?」

タバコを吸って、吉岡が言う。

「基本は一緒だよ」

吉岡さんは簡単に言うけど、
やっぱり不安だなあ…

「わかりました…
 とりあえず、望遠レンズに慣れてきます」

と言って、美桜は外に出た。
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