Fun days

鈴ちゃんと

美桜は外のベンチに座って、カメラをのぞいていた。

すごい。
今までの見え方と違う…
これで撮るのかあ。
上手く撮れるかなあ…
写真楽しみって村田が言ってくれたけど、
ちゃんと撮れるかな。
全部ブレブレだったらどうしよう…

しかも、相手は知らない人だし。
いい写真が一枚も無かったら、がっかりするよね。
せっかく友達ができたのに、
私のせいで村田が責められたりするかも。
どうしよう…

…吉岡さんに、ついてきてもらおうかな。
うん、そうしよう。

美桜が写真研究会に戻ろうとすると

「美桜ちゃん。…カメラでかくなった?」

ギターケースを持った鈴ちゃんがいた。

「うん。望遠レンズつけてみたの。
 これからバスケを撮らせてもらうんだ」

「ああ、村田君、健吾たちと
 バスケやるんだっけ」

「そう。鈴ちゃんが紹介してくれたんだってね」

「うん。高校の友達。
 うちら付属高校からだから。
 みんないいやつだよ」

鈴ちゃんはベンチに座って
タバコを吸い始めた。

「ありがとう。村田うれしそうだった」

「美桜ちゃん、いつも心配してたもんね。
 村田は友達がいないからって」

「…いつもじゃないでしょ。
 たまに心配してただけだよ」

ちょっと恥ずかしくなる美桜。

「みんな、あの金髪を見て
 ヤンキーだと思って、嫌煙してたみたいだよ」

「え、そうなんだ…」

この前、絶対に金髪やめないでって
言っちゃったな…訂正しないと。

「またジャズ研も撮ってよ。
 みんな喜んでたよ」

鈴ちゃんは、にっこり笑って言った。

うれしいな…
私の写真で喜んでくれるなんて。

「実は、スポーツの写真を撮るの初めてで、
 バスケをうまく撮れるか心配なんだ…」

美桜は、鈴ちゃんに不安をうちあけてみた。

鈴は少し考えて、言った。

「大丈夫だよ。バスケにこだわらず
 動いてない写真も撮ればいいじゃん?
 集合写真とか、休憩中の写真とか」

あ、そうか。
みんなが喜ぶ写真って、そういうのもあるか。
なるほど…

「でも、バスケしてる写真が
 一枚も無かったら、みんな残念がるよね」

「そしたら、また撮ればいいじゃん。
 最初は誰でも失敗するんだから、しかたないよ。
 大事な友達の仲間なんだから、
 わかってくれるよ」

…そっか。
美桜は、心のひっかかりが取れた気がした。

「そうだよね。村田の友達だもん。
 きっとみんな優しいよね。
 鈴ちゃん、ありがとう」

「うん。楽しんで撮りなよ」

「そうする」

美桜は満面の笑みで答えた。
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