Fun days

バスケ

村田は体育館でそわそわしていた。
とっくに3時は過ぎている。

美桜、来るの嫌になったのかな…
経営学部の宿題の情報交換してないで、
写真研究会に一緒に行けばよかったな。
しかもみんなに、すごく可愛い子が来るって
言いふらしちゃったし…
俺、うそつきだ~…。
反省し始める村田だった。

すると、体育館の硬いドアがギーっと開く音がした。

「こんにちは~…」

美桜の声だ!
すぐに体育館のドアに駆けつける村田。

「よかった。来ないかと思った」

安心して、ちょっと泣きそうになる村田。

「ごめんね、鈴ちゃんと話し込んじゃって…」

今日の谷中先生の授業について
語り合ってしまっていた。

美桜は言いながら、村田の後ろにいる男に気づく。
でっかい人…
そして、濃い顔…
バスケやってます!って感じがする。

「お~近くで見ると、よりかわいいね~。
 村田も惚れるわけだ」

その大男が言った。
美桜が眉をひそめる。

「健吾、ちょっと!」

ひいている美桜を見て、村田が止める。

…初対面で可愛いって言われるの、
嫌々行った合コン以来だなあ。
それに村田も惚れるって…
鈴ちゃん、みんないいやつだって言ってたよね…
本当かな…

「…美桜、そこのベンチに座って見てて」

村田は健吾を追いやりながら、
怪訝な顔の美桜に言う。

美桜がベンチに座ると、
みんなウォーミングアップを始める。
村田の金髪はやっぱり見つけやすくていい。
でも、黒にしたほうがいいよって言わないとなあ。

早速、カメラのファインダーをのぞく美桜。
これくらいの動きなら撮れそう。
安心したら、楽しくなってきた。
フィルムの替えもあるので、調子よく撮る。

ふと、みんなの動きが止まった。
体育館の真ん中に集まっている。
もしかして、試合が始まる?
と思っていると、みんな動き出した。
そんなに速くないな、と思って安心していると
急に、左のゴールから右のゴールへと
全速力で動き出す。

うわ…
これ無理かも…
圧倒される美桜。
村田がどこにいるかすら
よくわからなくなってきた。

えーと、とにかく撮れって言ってたな。
しかし、撮るタイミングをファインダー越しに
探していたら、酔ってきた。

気持ち悪くなって
いったんカメラを膝の上に置く美桜。

バスケってすごいなあ…
こんなに動くんだ。
そういえばちゃんと見るの、初めてかも。
カメラをのぞかずに、ぼーっと見ていたら
村田の金髪も見つけられた。

あ、ボール持った。
あー、取られちゃった。
すごく走ってる。
あんな風に走るんだなあ、村田は。

英語に間に合いそうになくて
二人で走ったことがあったけど
自分も必死でよく見てなかったし。

ふふふ、楽しそう。

またカメラを構える美桜。
バスケの動きに慣れてきて、シャッターを押す
タイミングが、掴めるようになってきた。
なんだ、ずっとファインダーを覗いていなくても
撮れるじゃん。
楽しくなってきた。

ふと、バスケをしているみんなの顔が、
いい表情だと気づく。
好きなことをやっている人は
勝手にいい顔になっていくなあ。
美桜の顔もほころぶ。

ちゃんとみんなのいい顔、撮れてるといいな。
そう思いながら、シャッターを切る美桜だった。
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