Fun days

デジ一

梅雨明けが近いからだろうか、
太陽は張り切ったように
キャンパスを照らしている。

明日から夏休みで良かったと
心から思いながら、美桜はB棟に向かっていた。

「美桜!」

馴れ馴れしい声に慣れて
普通に振り返る美桜。
でも今日の健吾は、素敵なものを持っていた。

「…どうしたの、そのカメラ」

一眼レフ…しかもデジタルだ。
望遠レンズもついてる。

「これ、美桜にあげる。
 親父が買ったんだけど、使わないから」

目が丸くなる美桜。

「昨日の責任者、俺だし」

「いや、もらえないよ、こんな高価なもの」

「でも使ってなくて、もったいないから」

目はカメラに釘付けの美桜。

「…いや、でも…もらえない」

「美桜って結構堅いよな。
 …じゃあ捨てるわ」

思わず健吾の腕をつかむ美桜。

「え?捨てないでよ。いいカメラだよ?」

「だって使ってないもん。
 親父、好きにしていいって言ってたし」

カメラを見つめて、考える美桜。

「…じゃ、ちょっとだけ貸してください」

「うん。永久に貸す」

「…ありがとうございます。
 ちょっとだけ借ります」

「あ、あさって試合あるんだ。
 それで撮ってくんない?」

「…うん。いいよ」

言いながら、楽しみで笑ってしまう美桜。

「お前、本当にかわいいな」

美桜の頭を撫でて言う健吾。

「ありがとうございます」

デジタル一眼レフで撮れるのがうれしくて、
頭を撫でられようが、軽口でほめられようが
どうでもいい美桜だった。
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