Fun days

試合1-1

遅れてきた一校が到着すると
すぐに試合は始まった。

村田はもう金髪じゃないから、
背番号をちゃんと覚えておかないと。
…6番ね。
”六”、村田の”む”だ、と思って笑う。
覚えやすい。

杏子ちゃん、本当に審判やってる…
かっこ良すぎる…!
宣言通り、杏子を撮りまくる美桜。

ファインダー越しにではなく、
カメラから少し顔を出して、肉眼でボールを追う。
ここだ、という時にファインダーをのぞき、
シャッターを押す。
フィルムの心配はないから、どんどん撮る。
ふふふ。やっぱり楽しい。

バスケをしてる健吾は本当に男前。
いつも健吾を毛嫌いしている美桜でも
モテるわけだ、と納得する。

佐々木君はすごく落ち着いている。
まわりをよく見てボールをまわす。
下手に動かないから、撮りやすいのもいい。

村田はよく動いている。
やっぱり試合って楽しいのかな。
見ていて嬉しくなる。

村田が3ポイントシュートを決めた。
こっちを見て笑ってる。
つられて笑っていると、相手ボールを奪って、またシュート。
…村田ってあんなに上手だったっけ?
練習とは気合いが違うのかな。

活躍する村田にボールが集まる。
村田はそれに応えるように、シュートを決める。
本当にすごい…と感心していると、
村田がこっちを見て笑う。
ん?シュート決めるたびに、私を見てる?
ちゃんと撮ってるか、確認してるのかな…
あ、また。
もう、ちゃんと撮ってるってば…

”ピーッ”
長い笛が鳴って、みんなベンチに戻ってきた。

「おつかれー」

ベンチのみんなと、声を掛け合う。
美桜も笑顔で迎える。
村田がタオルを持って、美桜の前に立った。

「村田、がんばってたね」

「うん」

笑顔で答える村田。

「いい写真、撮れた?」

「うん。ばっちり。ちゃんと撮ってるから
 こっち見て確認しなくても、大丈夫だよ。」

笑って美桜が言う。
困ったような顔になる村田。

「…別に、写真撮ってるか確認するために
 美桜を見てるんじゃないよ」

「え。そうなの?
 じゃあ、なんで?」

と聞いたが、村田はうつむいてしまった。
そんな沈黙の中、休憩時間は終わった。
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