Fun days
交流試合

試合前

夏休み最初の日曜日は、
梅雨明けしようか、どうしようか、と
悩んでいるような曇り空だった。

でも、雨が降らなくて良かった。
写真研究会の部室から、三脚と
カメラ二台を運びながら美桜は思う。
体育館の近くまで来ると、
外で仲間と話していた村田が美桜に気づく。

「美桜。三脚持つよ」

駆け寄った村田は、タンクに短パンで涼しそう。

「ありがとう」

私も、もっと涼しい服にすれば良かった…
空いた手で額の汗をふく。

「もうみんな来てるの?」

「ううん。まだ試合相手が一校来てないんだ。
 ゆっくり準備して」

風の通り道を確保するために
開け放たれたドアから体育館に入る。
全ての窓が開いていて、意外と中は涼しかった。

「おー、美桜ー。カメラ使えた?」

健吾が大きな声で言う。

「うん。ばっちり」

満面の笑みで美桜は答える。

「それは楽しみだな」

「杏子ちゃんは?」

キョロキョロしながら探しているが、見つからない。
と思ったら

「美桜ちゃん!」

と杏子が駆け寄ってきた。
黒いポロシャツを着ている。

「杏子ちゃん、黒も似合うね」

この前は白い服で、ナチュラルな感じだった。

「うん。今日は審判やるから」

「え、そうなの?すごい!
 杏子ちゃんのこと、撮りまくるね」

照れたように笑う杏子。

「俺を撮りまくってくれよ」

口をはさむ健吾。

「あー、考えとく」

笑って答える美桜。

「美桜。三脚、ベンチの横でいいかな」

村田が三脚を広げながら言う。

「ありがとう。あとは自分でやるから、大丈夫だよ」

美桜はカメラのケースを置いて
村田から三脚を受けとる。

「村田。最初の試合、スタメンな」

健吾が村田に言う。

「すごいじゃん!がんばってね」

喜ぶ美桜を見て、村田も嬉しくなる。

「うん、じゃ行ってくる」

村田は健吾とコートに向かう。

「美桜がいると村田はキレキレだからな。
 頼りにしてんぞ」

健吾に小声で言われる。
笑って頷く村田だった。
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