Fun days

試合3-1

最後の試合が始まった。
来る前から村田に心配されていたけど
思っていた以上に長丁場だった。

座って撮っているだけで、こんなに疲れるのに
みんなはバスケしてるんだもんなあ。
スポーツをする人はすごい。
だから、みんないい顔になるんだな。
感心しながら、ファインダーをのぞく美桜だった。

村田を見て、ふと思う。
…あれが私の彼氏かあ。
ピンとこないのに、何故かどきどきする。
…深く考えるの、やめよう。

「あの、村田君の彼女、ですよね」

急に知らない女の子に声をかけられて、
びっくりする美桜。

「はい。そうです」

って答えないといけないんだよね…
うう。何だか後ろめたい…

「仲いいんですか?」

何か不思議な質問だな。
だから付き合ってるんでしょ?

「仲、いいですよ」

「へえ。でも、もてるでしょ?可愛いもの」

この子、何かいじわるな顔してる…。
普通にしてれば可愛い子なのに。

「まあ、そうですね…」

とりあえず、認めてみた。

「村田君大変ですね、もてる彼女で」

何が言いたいんだろ?

「そうですね。でもラブラブなんで。
 …写真撮るので、もういいですか?」

やばい、声が冷たくなってしまった。
顔も作り笑いっぽくなってる気がする。

「あ、ごめんね。じゃまたあとで」

あとで?
こっちから話す予定は無いけど。
…うーん。私、すごく嫌な気分。
あの子、わざと意地悪な質問してたよなあ。

ふと思い出した。
中学の時につきあった男の子。
名前は忘れてしまったけど、すごくモテる子で
今みたいに、他の女子に意地悪な質問されたなあ。
嫌な気分にばかりなるから、別れちゃった。

ああ、村田、モテてるのかあ。
…良かったね。あとで教えてあげよう。

笑えないので、カメラで顔を隠して
そんなことを考えていたら、休憩に入った。

村田がかけよってくる。

「美桜、さっきの子と何話してたの?」

試合中なのに、村田はよく見ているなあ。

「本当につきあってるのか、探ってた感じ」

「へえ。…つきあってないって言った?」

心配そうに聞く村田。

「言うわけないじゃん。今日一日はなりきるよ」

「ごめんね。迷惑かけて」

謝っているのに、少し笑って村田が言う。

「いいよ。…またコメダ珈琲行きたい」

「うん、行こう」

コメダ珈琲くらいで、彼女のふりをしてくれるなら
毎日でもお願いしたい、と密かに思う村田だった。
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