Fun days

狭い

不思議と、カメラを構えると気分が落ち着いた。

「撮るよー」

美桜のかけ声とともに、みんな笑う。
思わず美桜も笑顔になる。

健吾が立ち上がり、他校のみんなの席で

「美桜、こっちでも撮って」

言いながらしゃがむ。

「はーい。撮るよー」

やっぱりみんな笑う。
何か嬉しい。

「しかたねえから、ここでも撮るか」

ふざけて村田の首をしめながら、健吾は言った。

「みんな、寄って」

美桜が声をかけると、女の子が村田に寄り添う。
急につまらない気分になる美桜。
この写真はすぐ捨てよう、と思う。


「なんか彼女、冷たいね?」

他校の女の子に言われる村田。

「うん…」

さっき泣いてたからなあ。
何があったんだろう。
佐々木に睨まれて、近くに行けなかったけど…

「どこがいいの?かわいいけど、性格キツそう」

冷たくその子が言う。

「全部…かなあ」

改めて聞かれると照れるけど。
うん…全部好きだなあ。

「村田君が優しいから、ワガママでしょ」

「そんなことないよ。すごく優しいよ」

うん、美桜は優しい。
一日俺につきあってくれて。
彼女のふりもずっとしてくれて。
明日もみんなのために、写真をまとめてくれるし。
…大好きだなあ。

美桜の笑い声が聞こえる。
さっき泣いてたのに、もう笑ってる。
良かった。
安心したら、何だか寂しくなってきた。

いいなあ、みんな。
美桜と一緒に笑って…
俺、何やってんだろ。
美桜がせっかく近くにいるのに。

「ごめん、俺あっち行くね」

村田は立ち上がって、美桜のところに行く。

「入れて」

言いながら、無理やり佐々木と美桜の間に座る。

「えー、狭いよー」

文句を言いながらも、杏子のほうに詰める美桜。
それを見て、仕方なく佐々木も移動する。

「おい、めちゃくちゃ狭いぞ」

冷たく言う佐々木に背を向けて
村田は美桜に聞く。

「さっき泣いてなかった?」

「…ちょっとね」

すごく近くで真剣に聞くから
美桜は目をそらしてしまう。
さっきまで女の子とへらへらしてたくせに。
ちらっと見ると、
村田はまだ美桜を心配そうに見ている。
もう、今更心配したって遅いんだから…
そう思いながらも、顔が熱くなっていく。

そんな二人の空気を邪魔するように

「明日何時にする?
 村田んち、わかんねーし」

健吾が言った。

「明日?」

「明日みんなで写真見ることにしたの。
 いいよね?」

「え、う、うん…」

美桜と二人かと思ってた…
あからさまにガッカリする村田。
無理やりにでも、美桜とずっと一緒にいればよかった…
今更後悔してもやっぱり遅いのだった。
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