Fun days
素直

美桜は村田の家で
パソコンを操作しながら言った。

「写真は、撮った順に並べればいいよね。
 写ってる人ごとに並べたほうがいいかな?」

「ううん、時間でいいでしょ」

佐々木が答える。

「この写真、微妙かなあ…」

「いや、動きがあっていいじゃん。
 佐藤、気に入るかもしれない」

美桜がパソコンを操作し、佐々木が答える。
杏子は二人の間で話を聞いている。
入り込む場所がなく、
村田はソファでぼーっとしていた。
俺の家でやる意味ないなあ、と思う。

「村田、ナルトの6巻は?」

暇すぎて、健吾は漫画を読みはじめた。

「え、無い?あるはずだけど…」

さっきから健吾の相手ばかりしてる村田。

そんな二人をまったく気にせず、
パソコンの画面を見ながら美桜が言う。

「ここから杏子ちゃんばっかりなの」

「よく撮れてるね」

佐々木が言う。
照れたように笑う杏子。

「ああ、杏子ちゃん、かわいい…」

美桜が画面の杏子を見て、うっとりとつぶやく。
本当に可愛い。すごくいい表情だし。
その言葉につられて、健吾と村田もパソコンを覗く。

「ほんとだ、可愛い。それに、
 杏子の良さがちゃんと撮れてる。」

村田の言葉を聞いて、誇らしげに美桜は笑う。
しかし、健吾は怪訝そうな顔をしている。そして

「…そんなに言うほど、可愛くはねーだろ」

ぶっきらぼうに言い放った。

「えー。すごくかわいいのに」

美桜がむっとして答える。

「いや、なんか違うだろ。次元が」

「なにそれ、次元って」

「んー、よくわかんねーけど。
 …女としての可愛さは無いな」

健吾の吐き捨てるような言葉を聞いて、
美桜は目を見開いた。
そして、激しく言い返す。

「健吾、ひどい!
 杏子ちゃんは女の子っぽくて可愛いよ!」

言っても収まらないようで、
完全に怒った顔で、健吾を見ている。
美桜に責められて、イラついた様子の健吾。

「俺はそうは思わないんだよ。
 美桜のほうが可愛いだろ。なあ、村田」

俺にふるなよ、と村田は思いつつも

「まあ、そうだけど、杏子も可愛いよ」

何とか無難に答える。
まだ美桜は健吾を睨み続けている。

ふと見ると、杏子は
体育座りの自分の膝に顔を埋めている。
少し見えている頬は、真っ赤だ。

「美桜、ちょっと…」

村田が声をかける。
振り向いた美桜が杏子を見て驚く。

「ごめん、杏子ちゃん…」

「…ううん、私、帰るね」

杏子が立ち上がる。

「え、杏子ちゃん」

美桜が見ると、杏子は泣いていた。
慌てて玄関まで追いかけるが、
ひきとめることはできなかった。

呆然とする美桜の横を、佐々木が通る。

「俺、行くね」

そう言って、杏子を追いかけて出て行った。

美桜は二人が出て行った玄関を
見つめて、しゃがみこむ。

「美桜、大丈夫だよ。佐々木がついてるから」

村田は美桜の側に寄り、声をかける。

「…杏子ちゃんのこと、泣かしちゃった」

「わざとじゃないじゃん。しかたないよ」

うつむく美桜。
村田は頭を撫でる。
それを見て、健吾は

「何だよ、つまんねーの」

不機嫌そうに言って、出て行った。
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