Fun days

花火

今日は念願の花火大会だ。
とは言うものの、もう二人で水族館に行ったし、
美桜が雅巳の家に泊まることも、当たり前になった。
でも、やっぱり花火には行きたいと思う雅巳だった。

二人で手をつないで花火を見るのが
目標だった7月の俺に、教えてあげたい。

美桜は、実は泣き虫だ。
お笑いのDVDばかり見たがるのは、
感動的な映画を見て、泣きたくないから。
決して、俺といい雰囲気になりたくないわけではない。

あと、いつか真二さんが言っていた通り、怖がりだ。
水族館に二人で行ったとき、
しっかり手をつないだうえに、俺の腕を握って離さないから、
照れていたら、はぐれるのがこわいと、美桜は心細そうに言った。
確かに混んでいたけど、美桜を見つけるのなんて簡単なのに。
小さいころ落ち着きがなくて、よく迷子になったせいだと
美桜は恥ずかしそうに言った。
だから、俺たちはいつも手をつないでいる。
きっと、つきあっていなくても、花火では手をつないだだろう。
気合を入れなくても、大丈夫だ。

そんな美桜を、俺は全部含めて、大好きだと思う。
まだつきあって一か月も経っていないのに
いろんな顔を見せてくれた。
まだまだ、俺の知らない美桜がいるんだろう。
これから、どんな美桜に会えるんだろうか。
楽しみで仕方がない。

美桜の隣で、美桜の全部を見ていたい。
今、この瞬間は、花火みたいにすぐ消えてしまう。
でもまたすぐに、次の花火が打ち上げられて、光り輝く。
そのすべてを、この目で見ていたいと思う。

花火は、美桜を後ろから抱きしめて見た。
7月の俺には想像がつかない大胆な行動だ。
でも美桜は笑って、俺の腕を握るんだ。
信じられないだろう?
本当に、信じられないことばかりが起きるのが
人生なんだろうな、なんて花火を見ながら思った。
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