Fun days

夏休みはあっという間だった。
また火曜日が来て、一限の英語に出なければならない。
でもこれからは平気だ。
美桜が泊まって、起こしてくれるから。

「雅巳、朝だよ」

シャワーを浴びた美桜が、下着をつけながら言う。

「英語だから、起きて」

布団をはがすと、裸の雅巳。
全身あらわなのに、まったく隠そうとしない。

「美桜…一緒に寝ようよ…」

こうなるから、バイトの後のえっちは止めようって
言ってるのに…
断れない自分を棚に上げて、美桜はむっとしている。

「無理。まじで起きて。置いてくよ」

冷たく言い放つと、美桜は寝室を出た。
玄関のドアを閉める音は聞こえないから大丈夫だな、
と思いつつも、仕方なく雅巳も起きる。

美桜はキッチンでオレンジを切っていた。

「俺も食べたい」

言いながら、背後から抱きつく雅巳。

「包丁を持ってるときは、いきなり
 抱きつかないでって、言ってるでしょ」

雅巳を睨みながら言う美桜。

「ごめんなさい」

美桜は怒ると本当に怖い。
付き合っていないときのほうが、優しかった気がする。

「はやくシャワー浴びて。寝癖ひどいよ」

雅巳の口にオレンジを押し込みながら
美桜は言う。

「ふぁい」

もぐもぐと食べながら、風呂場に入る雅巳。
…今思うと、一限の英語を選んで良かったな。
起きられなくて、何度も単位は諦めようと思ったけど
美桜が起こしに来るようになったから、二人の距離は縮まった。
一限の英語がなかったら、今の俺たちはいない。
…俺、グッジョブ。
あ、教室でしたくなったら困るから、行く前にキスしておこう。
美桜の機嫌を損ねないよう、急ぐ雅巳。

美桜は窓の外を眺めていた。
もう秋の風が流れてきて、気持ちがいい。
こうしてまた季節がめぐるんだな。
ここで雅巳とどんな風景を見るんだろうか。
楽しみだな。また写真をたくさん撮ろう。

「美桜、おまたせっ」

急に雅巳が抱きついてきて
完全に自分の世界に入っていた美桜は
体をびくっとさせて驚いた。

「びっくりした…」

「あ、ごめん…」

「いきなり抱きつくのやめてって、言ってるじゃん!」

そうなんだけど、つい…
見ると、美桜は涙目。ああ、怖がらせてしまった。

「ごめんね」

心から反省して美桜を抱きしめる。

「もう…いいよ。時間がないから行こう」

あーあ、キスはできなさそう。と思っていると
美桜が雅巳の顔を掴んで、唇に唇を押し付けた。
たまらず雅巳は美桜の唇の間に舌を入れる。

「…んー、朝から濃すぎだよー」

自分からしたのに、美桜は文句を言う。
まあ、いつもそうなんだけど。
可愛くてまた抱きしめてしまう。

「はいはい、続きはまた帰ってから。学校に行こう」

「うん」

と言いつつ、名残惜しくて離れられない。
確かに、続きはいくらでもできるけど、
今、抱きしめていたいんだよな。

「美桜、大好き」

「うん。私も雅巳、大好き」

そう言いあって、やっと離れる二人。
窓から9月の太陽が、優しく二人を照らしていた。
< 70 / 70 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

レインボウ☆アイズ

総文字数/100,664

恋愛(ラブコメ)62ページ

表紙を見る
僕と三課と冷徹な天使 ~2015バレンタイン

総文字数/4,887

恋愛(ラブコメ)13ページ

表紙を見る
僕と三課と冷徹な天使

総文字数/103,256

恋愛(ラブコメ)84ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop