濃紺に染まる赤を追え。
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やっぱり日差しがあるのとないのでは違う。
冷房こそ効いてはいないものの、さっきまで照り付ける太陽の下にいたからか、廊下はとても涼しく感じた。
「どうしようかなー……」
まだチャイムは鳴っていない。
何をして時間を潰そうか考えながら、ぶらぶらと校舎を歩き回った。
堤くんは、毎度こんなつまらないことをしているのだろうか。
それならあの疲労感たっぷりの姿にも頷ける。
真面目な堤くんならやりかねない、と口角が上がった。
一階まで下りた。
けれど、授業中の教室の前を歩くのはどうも憚られて、また階段へと戻る。
職員室前を通るわけにもいかないし、どこに行くべきか、と手摺りに体重を預けながら思う。
「空き教室、……くらいしか行くとこないよね」
確か三階の角にまったく使われていない教室がいくつかあったはず。
階段からも近いし、授業中の教室の前を通らなくて済む。
思い立ち、階段を上る。
随分無駄な労力を使っているな、と苦笑いを浮かべながら重たい足を引きずった。
キャラメルの甘ったるさは階段を一段上るたびに薄れていく。
三階に着いた頃には、口の中から消えていた。