濃紺に染まる赤を追え。
掴めぬ風が宙を切る






「……松村?」


名前を呼ばれた。

顔を上げると、堤くんが不思議そうに首を傾げていた。


「……あ、ごめん。なに?」

「チャイム鳴ったよ」

「そ、か」


視線を落とすと、真っ白のノートが目に入る。

シャーペンは芯さえ出していなかった。


何をしてたんだろう、わたし。

受験生だっていうのに。


はあ、と溜め息を吐きながら、ペンケースを掴むと、


「……、あっ」


ガサガサと音を立てて、あちこちにペンが散らばった。

自分の鈍臭さに呆れる。

慌ててしゃがみ、拾い集めていると、いつの間にか隣で堤くんも拾ってくれていた。


「はい」

「ありがとう、……ごめんね」


差し出された数本のペンを受け取る。

それらを詰めて、ペンケースのチャックを閉めた。

そして次の授業の準備をしようと思いながら引き出しを漁っていると、再び堤くんに名前を呼ばれた。


「松村」

「ん?」




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