濃紺に染まる赤を追え。






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「あら、また生理痛?」

「心臓が痛いです」


間髪いれずにそう言うと、先生は深く微笑んだ。


本日二度目の保健室。

さっき先生と一緒に飲んだコーヒーの匂いと、薬品の匂いが混じっていて。

いい匂いとは言い難いけれど、それに安心感を覚えるわたしは、完全にここの空気に甘えきっている、と。

そう自覚はあるものの、他に行く宛てを知らない。


「心臓が痛いなら、仕方ないわよね」


ふふ、と笑みを零しながら、わたしをさっきのベッドへ促す。

やっぱり先生は何も聞いてこなくて、その優しさが身に染みた。


「何かいるものあったら言ってね」


布団にくるまりながら小さく頷けば、白いカーテンに隔たれる。


ゆっくりと息を吐く。

寒くもないのに指先が震えた。






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