濃紺に染まる赤を追え。




「まあいいや、あんたのこととか興味ないし」

「……、そう」


自分から聞いておいて、その反応ですか。

いや、まあ、ナミさんらしいと言えばナミさんらしいけど。


「つか単語帳広げんの、そろそろやめてくんない? まじ意味不明すぎて殴りたくなるから」

「えー……」


じゃあここで食べなかったらいいのに、とまた思うけれど、本人にその気は全く無さそうで。

仕方なく単語帳を閉じて引き出しにしまえば、ナミさんは待ってましたとばかりに雑誌を広げた。

え、なに、ただ雑誌読みたかっただけですか。


「あー、金欲しい。ガチで金欲しい。新しいチークが欲しい」

「……」


呆れて、白けた視線を送ってみるものの、ナミさんはそんなのには動じないとでもいうように雑誌をぺらぺらめくっていた。

なんだか自分だけそんな反応をしているのも嫌だったので、窓の外に目を向ける。



空には消えかけの飛行機雲が二本、交差するように伸びていた。


桐谷は今、何してるだろうか。


RPGの続きだろうか。

またあの高速な指で連打してるのかな。

それともわたしがあげたノートを見ていたりするのだろうか。


いや、まさかね。

そんな都合のいいことはないと思う。


自分で考えたことなのに、どこか無性に虚しくなって。

口元に嘲笑を浮かべて、頬杖をついた。




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