恋の治療は腕の中で
暫くして中田くんが私の荷物を持ちながら私を抱えてお店を出ると、


「あれ?清掃中だって。

紗和ちゃん我慢できる?」

「うん。大丈夫だよ。」

私達はエレベーターに乗り込むと、私の意識がだんだん遠退いていく。


ガチャッ

薄れ行く意識の中で、何か扉が開く音が聞こえてきた。

するといきなり後ろに腕を引っ張られる。

な、なに?

すると誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。


「こいつをどうするつもりだ!」


「どうするって、紗和ちゃんが飲みすぎたらちょっと休ませてあげようと思っただけですよ。」

「飲みすぎた? ……お前何か入れたな。」


「はぁー、な、何言ってるんですか?」

「こいつの目見れば分かるんだよ。俺はこれでも医者だからな。」

「医者って言っても歯科医じゃないですか。」

「生憎だかれっきとした医師免許ももってるんだ。」

「えっ!?」


「警察を呼ばれたくなければとっとと失せろ。」

「俺は、お前の技工士としての腕はこれでも認めてるんだ。いつまでも紗和に未練残してないで前に進め。

このことは、俺の心に止めておく。

それと悪いがこれは俺のものだ。」


「藤堂先生……。



すみませんでした。」


「失礼します。」


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