恋の治療は腕の中で
「これなんかどう思いますか?」


心奈が選んだのは冬物のコート、手触りの滑らかな白いコート。トレンチコートのようにベルトがついていて襟には白いファーがついている。そのコートは上品でいるうえにあまり厚ぼったくなく、着てみると綺麗なシルエットがでて使い勝手が良さそうなコートだ。

見るとカシミヤ100と書いてあり値段はなんと24万円税抜きでね。



「ち、ちょっと心奈これ高すぎない?」

「えー、そうですか?」


なんて言いながらちょっと紗和さんも着てみてください。なんて私に無理矢理着せてきた。


うわー、24万円税抜きのコートなんて初めて袖を通すよ。

なんか緊張するんですけど、手洗っておけばよかったかな。

無理矢理着せられたコートだったけど、着てみると見た目と違って軽くて温かい。

ごわつき感も全くなく体にストンと馴染んでくる。

さすが税抜き24万円は伊達じゃない。


「あ~、なんかそれ紗和さんの方が似合ってません?」


「そ、そんなことないよ。

こんな高いの着てるだけで緊張しちゃうよ。」


「えー、絶対似合ってますよ。」


そう言われても心奈さん、こんな高いの買えませんから。


「着心地はどうですか?」


「うん。すごくいい。

さすがカシミヤだね。軽くて温かいし、体に馴染むよ。」


「やっぱり私にはちょっと違うかも。」

そう言って心奈は違うコートを物色し始める。


それからなん着か試着して心奈が選んだのは紫のハーフコート。

紫なんて私は絶対選ばない色だけど、ワインレッドに近いその色は派手な顔の心奈にはとても良く似合っていた。


お店を出てお茶をしていると忘れ物をしたからと心奈は私をここに待たせてさっきのお店へ戻って行った。

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