恋の治療は腕の中で
皆が着席すると、シャンパンが運ばれてきて

「それでは、もう一度紗和の誕生日を祝って


かんぱーい!」


おめでとう。


「あ、ありがとう。」


「もー、紗和さん。なんで今まで誕生日教えてくれなかったんですか?」


「えっ、だって私の誕生日なんて別に祝って貰うほどの事でもないし。」


「バカ紗和。

祝って貰うことでしょ。」

瑞季が笑いながら言ってきた。


「そうですよ。

何度聞いても教えてくれないんですもん。」


私は子供の頃のあの寂しさが忘れなれなくて誰にも自分の誕生日を教えないでいた。

「ごめん。」


「さあ、もうその辺でいいんじゃないのか?

オーナー料理お願いします。」


悠文の一言で私の誕生会が始まった。





皆でワイワイ話したながらあっという間に時間が過ぎていった。


少し照明が落とされたと思ったら、


ハーピバースデートゥーユー♪

音楽と共にケーキが運ばれてきた。

にしてもデカっ!

長方形のそのケーキは長さゆうに50センチはありそうだ。ケーキの上にはもちろんの事トレーの上にも沢山のフルーツが飾ってある。


「おいしそー!」

はっ、思わず心の声を口に出してしまった。


「紗和さん、まだ食べられるんですか?」


そりゃそうよ。デザートは別腹っていうじゃない。

「何で皆は食べないの?」


皆そろって一口でいいかな。って、嘘でしょう。こんなに美味しそうなのに。


ロウソクを吹き消した後は切り分けて貰う。

悠文が沢山あるから他は協力して貰ったお客さんに差し上げて下さい。って、こう言う所は気が利くというか大人だなぁー、と感心してしまう。


こんなに素敵な誕生日を迎えたのは初めて。お母さんにお祝いしてもらえないことで自然と自分の誕生日は無かったことにしていた。


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