恋の治療は腕の中で
私達が着替えてリビングに戻ると心奈が慌ててソファーから立った。

私は笑いながら


「いいよ。座っててよ。何か飲むもの用意するね。」


二人でダイニングに向かい、悠文はワインクーラーからワインを取り出すと慣れた手つきで栓を開けグラスを4つ持ってリビングに現れた。


「二人は飲めるんだよね?」

そう言ってグラスにワインを注ぐ。


「ありがとうごさいます。」


「紗和は、飲めないから滅多にワインを開けることがなくなったよ。
だから遠慮しないで沢山飲んで。」

「いただきます。」

紗和がオードブルを運んできてくれた。

「紗和も少し飲む?」


「じゃあ、少しだけ。」


そんなやり取りを二人が眺めてると、それに気付いた紗和が


「今まで隠しててごめんなさい。


実は一緒に住んでるの。」


「えー、そうなんですか?いったいいつからなんですか?」


「火事のあった日から。」


私が恥ずかしそうにしてると


「ごめん。俺が余り他の人には話さないよう言ったから。」

悠文が気を使って言ってくれた。

嘘。誰にも話すななんて一言も言ってないのに。

「他にこの事を知ってる人は?」


「医院長には紗和がここに住み始めた時話したよ。」



ピンポーン♪

チャイムがなった。

私はインターフォンをとりそのまま玄関に向かう。



「失礼します。」


若い男の人が次々と料理をダイニングテーブルに並べた。

並べ終わると


「失礼しました。」

そう言って悠文とリビングを出る。暫くして悠文が戻って来ると二人をダイニングの方に座らせた。そしてもう一度ワインをグラスに注いで話しを始めた。


「どうか、紗和を許して欲しい。こんなかたちで話すつもりじゃなかったんだ。悪いのは全部俺なんだから。」

私は何も言えずただ俯いていた。


「良かったです。」



へっ?私は瑞季の顔を見た。

瑞季は笑いながら私の方を見て

「私は、紗和のアパートが火事になったって聞いてすごく心配したんです。だって紗和には他に行くとこないの知ってたし。私の所に来るかも聞いたんですけど、大丈夫だっていうし。最初はただ遠慮してるのかな?って寂しかったんですけど、紗和を見てたら本当に大丈夫なんだってことがわかったから。」


「あー、それ分かります。

だって紗和さん明るくなったから。洋服の色や好みもですけど、何て言うか全体の雰囲気が。」

今度は心奈の方を見た。

「だから怒ってませんし、裏切られたとも思ってませんよ。」


「そうそう。今まで強がってきた紗和がやっと心を許す相手ができたんだから。」


二人がそんな風に思ってくれてたなんて、私は嬉しくて涙が溢れてきた。


「やだなー、紗和さん。そんな当たり前のことで泣かないで下さい。
私まで泣けてきちゃうじゃないですか。」

心奈はハンカチで自分の涙を拭った。



「二人ともありがとう。」

それからは、他愛もないおしゃべりをしながらご飯を食べた。


暫くして心奈が


「そういえば、西園寺さんって藤堂先生とどういう関係なんですか?」


酔ったせいか心奈が直球でき聞いてきた。


悠文はどう説明したらいいか少し考えてから

「彼女は、昔俺の父親が勝手に決めた許嫁なんだ。とっくに婚約は解消したと思ってたんだけど、どうも何か誤解があるらしい。近いうちに誤解をとくつもりだ。」


「そうなんですか。」


「藤堂先生に私がこんなこと言う立場じゃないことは分かってますが、その問題が解決したら直ぐに紗和に説明してあげてください。彼女は強そうに見えて本当は、言いたいことの半分も言えないような子なんです。特に自分のこととなると尚更なんです。」


「あー、分かってるさ。ありがとう。これからも紗和の助けになってくれ。」


「もちろんですよ。」


二人が帰って私がお風呂から出ると悠文がソファーでコーヒーを飲んでいた。
悠文は私に気付くと

「こっちにおいで。」


手でソファーを叩いた。


私が座ると


「今度の土曜の午後麗香に会ってくるよ。」


えっ、

私は不安そうな顔で悠文を見た。

「大丈夫。心配するな。ちゃんと婚約も解消して病院にも来ないように言うから。」


「うん。」

「少しは俺を信用しろよな。」


「そんなつもりじゃないの。」

私は慌てて否定して。だってホントにそうなんだもん。

「分かってるさ。あんまり紗和が深刻な顔するから冗談だよ。」

もー。



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