恋の治療は腕の中で
「おはようございます。」

「あー、おはよう。」


「どうしたんですか?紗和さん顔色悪いですよ。」


「ちょっと疲れてるのかな?」

私は曖昧に笑ってみせた。

私がそれ以上言う気がないと思ったのか心奈はそれ以上は言ってこなかった。


恐る恐る診察室へ入るとそこに悠文の姿はなく、代わりに医院長がいた。


ん?私部屋間違えた?

慌てて外にでて診察室番号を確認したけど間違ってなかった。

医院長が間違ったんだ。納得して


「医院長、部屋間違えてますよ。」


でも医院長は一向に動く気配はない。


「いや、いいんだよ。

今日藤堂先生は休みをとってるから、代わりに僕が診察するんだ。」


えっ?休み?

そっか悠文にとって私はそんなことを言う必要もない相手なんだ。

「おや、紗和ちゃん。顔色悪いよ?

大丈夫かい?」


「はい。大丈夫です。ちょっと週末遊び過ぎちゃいました。」

ヘラヘラ笑って誤魔化した。


昼休みになり心奈は外に食べに行った。私は疲れて食欲がないからってスタッフルームに1人残り不動産屋からもらったプリントを眺めていた。

眺めては見たもののちっとも頭に入ってこない。
悠文と別れるって決めたのに心と頭は反対の事を思っている。

別れなきゃいけないと思う頭と、好きだから離れたくない別れたくないと思う心。

考えると切なさに胸が締め付けられる。
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