3日限りのルームシェア
それから10分後に梓はやってきた。
「マスターおひさ~~」
周囲をうかがう様にこそーっと登場した
「お~~あずちゃん。相変わらず元気そうだね。」
「あはは・・・それだけが取り柄なんでね。・・・それより知香達来てる?」
マスター黙って知香のいる席の方を指さした。
知香の座ってる席はちょうどカウンターから死角になる位置で
知香からはマスターと梓の席は見えないのだ
それをいいことに梓はカウンター席に腰掛けると
「マスターあの2人どう思う?」
「無駄に60年生きとらんよ。あれはなかなかいいカップルじゃないか?」
自信たっぷりのマスターの言葉に梓の口角が上がる。
「でしょ?私もね・・そう思うんだけど・・・見てよマスターあれ・・・」
知香と樹の席を2人で見ると
まるで中学生かとつっこみたくなる・・・そんな雰囲気だった。
「一人はヘタレ兄貴、もう片方は鈍感・・・この2人を3日でくっつけようと
考えたんだけどね・・・やっぱ3日間じゃ無理だったかなーと思って
今日は助っ人にきたんだけど・・・」
梓はカウンターに突っ伏すが・・・
「3日間っていうのはこれまた大胆だな・・・でも意外と互いの気持ちに
気がついちゃったりすると3日でもいけちゃうかもしれないね・・
恋ってそういうもんでしょ?」
60年生きてきた人の言葉には重みがある。
「でも・・・うちの兄貴、随分前から知香の事好きだったみたいなんだけど
ご覧のとおりのヘタレでございまして・・・」
でもマスターは笑みを崩さず
「大丈夫だと思うけどね・・・」
そういって2人の方を見ると思った以上に会話を楽しんでいる様だった。
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