3日限りのルームシェア
今朝まで一緒にここで朝食を食べた2人とは思えないほどの
緊張感が部屋いっぱいに充満してる。
「ごめん。・・・・ルームシェアの件、騙すつもりなんて全くなかったんだ。
もちろん君への気持ちもまったく嘘偽りはない。本心だ。」
知香は自分の足元だけを見つめながら樹の声に耳だけ傾けた。
「・・俺が君の事好きだって梓に話したのは、梓の披露宴のすぐ後だった」
「え?披露宴の後って言ったら・・・・4年前ですよね」
知香は初めて顔を上げて樹の顔をみた。
「梓には、俺が海外にいる間、知香ちゃんの近況とかをメールしてほしいって頼んだんだ。」
「近況?・・・」
「例えば新しく彼氏が出来たとか・・・・結婚するとかいうことがあればってね」
「・・・・・・」
「呆れただろう。これじゃ~まるでストーカーと変わらない」
智香はそれを否定できず少し困った顔で視線を泳がせた。
「梓からは何度か連絡はあったけど、だからどうこうするってわけでもなかったし、
梓もこんなヘタレな兄貴に同情して引き受けてくれたんだと思ったんだ。
でも梓がさ・・・こんなお願いを何で引き受けてくれたかわかる?」
梓の事だから決して興味本位じゃなかったことはわかる。
でも・・・・それ以上は
「俺と知香ちゃんがうまく言ってくれればいいなってのもあった。
だけどそれだけじゃなかったんだ。
もし、俺と知香ちゃんがうまくいって・・・・その…結婚とかになったら
梓と知香ちゃんは親戚になれる。そう思って協力してくれたんだ」
梓がまさかそこまで考えてたとは言われるまでわからなかったし
驚きで言葉が出てこなかった。
「梓にとって知香ちゃんは唯一無二の親友なんだよ。
知香ちゃんがいなければ今の自分はなかったって・・・
そのくらい大切に思ってるんだ。
そんな知香ちゃんと本当の意味で家族というか親戚にになりたいって・・・」
「梓・・・・・」
あまりにもスケールの大きすぎる話に智香はどう返事すべきか悩んだ。
「今回の事は俺の帰国と知香ちゃんのルームメイトの結婚で部屋が1つ空いたっていう
今までにない絶好のチャンスを何とかつなげたいっていう梓の願いと俺の願いが
一致してこの計画が生まれたんだ・・・・最初はこんな突拍子もない計画が
うまくいうとは思っていなかった。
でも・・このチャンスを逃したらもうきっと君とこうやって再会する事もなかったと思う。
だから俺は後悔してない。知香ちゃんを傷付けた事は申し訳ないと思ってる。
でも俺はどんな結果だろうが、君に気持ちを伝えれた事を後悔していない」
知香の目を真っすぐ見つめながら樹は言った。そして立ち上がると
「これが本当の事だよ・・・・黙って聞いてくれてありがとう。
じゃあ・・俺行くから・・・・荷物持っていくよ」
樹は立ちつくす知香の横を通って自室へ荷物を取りに行った。

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