あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
「すみません、メイド長!」
そのとき、一人の魔術師が中庭に入ってきた。
その黒い軍服とマントは土で汚れ、あちこち血が滲んでいて、今まで行っていたことが言わなくても伺える。
「何事ですか」
「はい、今私たちウェズリアの軍隊は再び侵入してきたオスガリアの軍隊と応戦中だったのですが……やつらはただ進軍するだけではダメと悟ったのか、兵力を増やし、さらに、新たな武器を投入してきました!」
「それで、状況は」
「それが……魔術師の半分が戦闘不可能状態に陥っていて……」
「ッ!」
この魔術師が焦っている理由もわかった。
今までのオスガリアは徐々に侵略の規模を拡大するだけで、完全に王都陥落を狙っているようには思えなかった。
しかし今回は違う。
魔術師の話によれば兵の数は今までとは比べものにならず、覇気からしてもう違うということは……本格的にウェズリア王都陥落に踏み切ったということ。
今、ウェズリアが最大の危機に襲われているんだ!
「王子たちは今のところは無事ですが、兵を守るため王子も先頭に立ち、戦っていて……オスガリアの目標も王子陥落。 王子をターゲットとし、集中砲火を食らわせています!」
指揮官であるカカオを倒せば、ウェズリアの兵たちは混乱する。
だから、カカオを狙ってるんだ!
カカオ‼︎
相当な実力者のリカエルさんはもしもの時の指揮官的な存在なのだろう。
すぐさま仕度を整えて的確な指示を鋭い声で飛ばす。
「わかりました! 貴方はすぐに設置されている緊急用転送魔方陣を起動! 救護班〈翡翠〉を向かわせて! 手の空いている兵や魔術師をできる限り呼び集めて! 怪我人の転送に手を貸すように言ってください! 私もすぐに戦場へ向かいます!」
「あたしも行くわ!」
「まお様!?」
食い気味で言うと、リカエルさんは困惑した表情を浮かべる。
「兵力が足りないんでしょ!? あたしも行かなきゃ、ここに呼ばれた意味がない!」
リカエルさんを見つめると、青い双眸があたしを強く見返した。
緊張が走る。
強い光の宿る瞳は一度も揺るがない。
しかし、彼女は一度目を伏せ、再びその瞳に強い意志を宿らせた。
「……わかりました。 くれぐれもお気をつけて、身の危険を感じたら、すぐに城へとお戻りください」
「わかった」
「クコをまお様と行かせます」
リカエルさんが言うと、メイド服から動きやすい格好に着替えたクコが後ろに控えていた。
「私がまお様を守ります。 ケガをなさったら、遠慮なくおっしゃってください」
「ありがとう……!」
「それでは、準備が整い次第、すぐに急行します。 ここへ集合してください」
リカエルさんはそういうと、城の中に一旦消えて行った。