あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。






 あたしはカカオに笑顔を見せると、背を向けた。



「……まお」

「ん? どうしたの?」



 突然呼び止められ、あたしは再びカカオと向き合った。


 うつむいているせいか、長い前髪で表情が隠れてしまって見えない。


その雰囲気は、いつもと違う気がした。


 
「……俺がどんな答えを選んでも……まおは俺を信じてくれるか……?」



 いつも自分の発言には自信満々な彼には、珍しい弱々しい声。


 上げられた顔は、どこか悲しげだった。




「そんなの──当たり前じゃない。 だってあたしは……」

「『あたしは……』?」



 自分で口にしてから、気づいて口に手を当てたときにはもう遅かった。



「なんでもない」

「ウソだ。 なにか言いかけた」

「……ほんとに、なんでもないの」




何でも、ないんだよ……。


 そういって、自分でどうしようもなく切なくなった。



< 230 / 335 >

この作品をシェア

pagetop