あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
思わず想いを口にしてしまいそうだった。
カカオは、姫のことが好きなのかな。
ううん、好きじゃなかったとしても、もしかしたら、カカオの結婚相手になるかもしれないんだ。
きっと、カカオの話からして、美人な姫なのだろう。
カカオと姫は容姿も身分もお似合いのカップル。
国を守るしがない戦士であるあたしには、この二人の間に入る余地はあるわけない。
ヘンに希望を抱いちゃ、ダメ……。
あとでつらくなってしまうのは、目に見えているんだから……。
おかしいな。
今まで、カカオとそうなりたいなんて思ったことなかったのに。
結婚するかも、なんて言われてから気づくなんて。
じわ、と目頭が熱くなって、なにかが溢れてしまいそうで、今度はあたしがうつむいた。
「じゃあね……あたし、部屋に帰る」
「……ああ。 話を聞いてくれてありがとうな」
カカオの声を背に、あたしは彼の部屋を後にした。