あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。
ううう。
黙ってたら、ダメだよね。
諦めたあたしは、素直に思ったことを口にする。
「あたしの想像なんですが、こんな自然豊かな場所が魔界と呼ばれている方がおかしいというか……。 もっと魔界はあたしが最初にいたような場所しか思い浮かばなくて……」
異臭が漂い、魔物がうごめき、空は濁り、池なんか紫色でボコボコと煮立っているような……。
ものすごく悪い印象しかない。
最初にいた場所が、まさにそんな感じだったから魔界だと思い込んでしまった。
「そういうことか」
王子は意外にもすんなり頷き、本に視線を移す。
そしてまた、あたしを見つめた。
ドキリと、胸が高鳴る。
「正確には魔界とは、魔の力を持ったものが集まっているだけだ」
「魔の、力?」
魔の力って、魔力ってこと?
王子はまた、頷く。
「ウェズリアには、魔力を持ったものが住んでいる。 全員が、魔力を使えるということだ。まおの言っている話は、地球人が、勝手に創造した幻想に過ぎない。
どうやら地球人は悪いものを全て魔界のものにしているらしいが、ウェズリアの者にとって『魔』とは別に悪いものの事をさすわけではないからな。 捉え方や意味が違うことからすれ違いが起こるのだろう」
そういうことだったのか。
なら、魔の界って呼ばれてもおかしくはないかも。
魔力持った人たちが住んでいるだもんね。
「魔力持っていない人と持っている人との区別とかってあります?」
「区別なら簡単だ」
突然王子は、あたしの方に大きな手を伸ばす。
え、え、え?
えー!
急激の展開に体温が高くなり、思わず目をつむってしまう。