スプリング×ラブ!
「なんなんだよ…っくしょん!…っとによー………っは、ハックシュ!」

(「アイツのせいだ、山口の。なんで窓なんか開けんだバカヤロ!」)
透夜は心底春を恨んだ。



春という季節をまだ好きだったころ、透夜は今の家に引っ越してきた。近くにある広い大きな公園と大きな桜の木が、彼の一番のお気に入りだった。

が、悲劇は起きた。

うっかり公園の一角にあった杉林の中で、新しくできた友達と一緒に夢中でかくれんぼをしたのが間違いだった。幼い透夜少年は、みごとに鮮やかに、花粉症にかかった。

杉、ブタ草、埃、ハウスダスト………
普通の人なら大して気にも止めない細かなものたちが、透夜に襲いかかったのだ。



かくして、アウトドア派の透夜くんは、春だけインドア派になった。





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