スプリング×ラブ！

「ただいまー………」

誰もいない部屋に向かって叫ぶ。
母親はファミレスでパート、父親は海外に出張中、兄弟もいない一人っ子。
ペットも飼えない。両親そろって犬猫アレルギーなのだ。



今、懐かしの、そして憎き公園はない。
杉の木も、桜の木も、彼にとっては幸運なことにない。鉄筋コンクリートマンションがそびえ立っているだけだ。

日照権だの建設反対運動などが近所で起きていたことは今でも覚えていて、幼いながらに『ニッショウケンってなに？』と父に訊いたのが特に強く頭の中にある。
その時父は、『お日様の光のなかに居られる権利だよ』と説明してくれたのだけれど、この間初めて電子辞書で『日照権』を調べた。