【短】溺愛ショコラ
工藤は、面倒な相手にだけは使うオネェ言葉で話しかけた。
顔が端正で、俗にイケメンとよばれる甘いマスクをしている工藤は、度々面倒な女に絡まれることがあった。
自分の見てくれだけを見て騒ぐ女達を遠ざけるために、ある日の工藤が思い付いた名案。それが、ビジネスオネェになることだった。
別に自分は同性愛者というわけではない。むさ苦しい男なんか、到底好きになれない。でも、うるさい女達を追い払うのには、ビジネスオネェは想像以上の威力を発揮した。
工藤がオネェだと分かった瞬間に、工藤の元から去っていく女達。
一言二言、オネェ言葉で話せば、大抵の女達はあっさりと身を引いてくれた。
『お久しぶりですぅ、先生~!もう変えられるなんて残念~…。』
目の前にいる香水臭い女もまた然り。
俺がオネェだと知らなかった女は当初、女の武器を最大限に駆使して、仕事中にもかかわらず俺に色気を振り撒いていたが、俺がオネェだと分かった瞬間、コロッとその態度を淡泊に変えた。
まぁ、別にそんなことが気に食わなかったわけではなく、1ヶ月経ってもこのきつ過ぎる香水の匂いに耐えられなくなったからクビにした。
『ワタシも残念よ。じゃ、ワタシまだ原稿があるから』
つまらない話もそこそこに、俺は木戸と共に部屋を出る。
あー…愛想笑いって面倒ー。
『お前って、本当に末恐ろしい男だな。』
『なんのことー?』
木戸の嫌味もオネェ言葉で跳ね飛ばし、エレベーターに向かう。