海と空と、太陽と
真実
全てが終った後

「…ごめんな」

本田君は私に謝る。

何も悪くないのに。

「ひっ、た、助けてくれて…ありがとう…っ」

静かな廊下には私の鳴き声だけが響いた。

「俺さ」

そう言って本田君は私の隣に屈む。

「ふぇ??」

「栞奈が好きだよ」

えっ…

二回目だけど突然言われてびっくりする私。

「って、こんな俺じゃ信頼ないか」

「…そうじゃないよ」

ふと気づくと、そこにはもう

悠大君の姿は無かった。

一体どこまで空気を読む人なんだろう。

「そっか…」

「だって…助けに来てくれたもん。信頼ない訳無いよ」

嬉しかった。

助けに来てくれるなんて思わなかったもん。

「そっか」

本田君は相変わらずだなって思った。

あの、かっこいいままだもん。

「俺な、本当は彼女の事好きじゃない」

「え…??」

なんで??

「その証拠に、彼女の名前一度も呼んだことない」

…そうだった。

あの日、私と靴箱で会った本田君と彼女。

その時は私の名前だけ呼んで、

彼女の事は、お前って言ってた。

「じゃあなんで、付き合って…」

「俺さ、どうしても栞奈守りたかった。彼女に告白されて、勿論俺は栞奈の事が好きだから断った。けど彼女が、私を断ったらあの子、野口栞奈に手を出さない訳にはいかなくなるから、って言われて今の彼女と付き合う事にした。俺が栞奈に出来ること、これしかなくて…ごめんな…傷つけてごめん」

本田君は全てを話してくれた。

「もう…ひっ、十分だよ…」

こんなにも私は守られてたなんて、

こんなにも私は好かれてたなんて、

私はなにも知らなくて…

「…たしも…」

「…栞奈??」

「私も…本田君の事が好きです…」

これが私の気持ちなんだね。

「それ…マジ??」

「…うん」

「マジかー」

「え??」

嫌だったかな。

「いや、バリ嬉しい」

そう言って本田君は私を抱きしめた。

「ほ、本田くっ」

「次こそ言えよ」

「え…」

「名前。基羅って」

「…うー、」

「言わねーなら離さねぇから」

「なっ」

「ほら。言ってみ」

き、…

「…き、らぁ…」

「…それじゃあ分かんねーよ」

「ばかー」

「ま、少しづつ、な??」

私の顔はきっと真っ赤で。

今日も私は本田…基羅に恋をする。

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