Curse of disease
「ポート、止まって!」

家の目の前なのに、ベルは僕の腕をがっしりと掴んで離さなかった。

「なんだよ、ベル」

「ポート、家の前に変な人が居るのよ。」

家の前に目を移す。
すると、顔はよく見えないが。
明らかに、容姿がおかしい男が立っていた。

肌の色は、黒みのかかった緑色。
こんな温かいのに、冬の服装。

「ポート、知り合い?」

「まさか。」

「家に入ろうとしてない?」

男は、ガチャガチャと家のドアを必死に開けようとしていた。

「ベル、母さんが!!」

僕は気付いた、母さんが家の中に居る。

母さんが危ない!

母さんを助けようと、立ち上がるけれど、ベルは僕の腕をまだ掴んで振り払おうとしても払えなかった。

「何すんだよ! ベル、母さんが心配じゃないのか?!」

「行っちゃダメよ、ポートが何か出来るの?」

「それでも、母さんを助けないと!!」

僕とベルが言い争っているうちに、男は僕らの家の中に入って行く。

「ベル! 離せ!!」

僕の大声に驚いたベルは、迂闊にも僕の腕を離した。
咄嗟に走り出す僕をベルは追いかける。

僕はベルよりも先に家の中に入った。
家に入ってからすぐに見える、綺麗なリビングは見るも無惨に荒れ果てていた。
母さんが好きで飾っていた花も、父さんがコレクションしていたカメラも壊れていて使い物にならないだろう。

「そうだ、母さんは。」

「ポート!!」

振り返ると、ベルは息を切らして僕を睨み付けていた。
怒られると思って目を閉じると、ベルから発せられた言葉は以外な物だった。

「ポート、お母さんは?」

「え、」

「お母さんはどこよ?!」

「…分かんない」

ベルは、僕を見下ろすと息を吐いて、“お母さんを探そう”と言った。

母さんの部屋がある2階へと登ると、そこは更に酷かった。家具も調度品も散らばっていて、壊れている。

脚の踏み場も無い場所に、母さんは仰向けに倒れていた。

「母さん?」

返事は無い、母さんの体をひっくり返して顔を覗き込む。

「…っ!」

「ひっ!」

ベルと僕は同時に声をあげて、母さんから離れた。
母さんの顔は、もうほとんど原型を留めていなかった。

それはもう、表現しようも無いくらい……。

「…う”っ」

そのとき、急激な吐き気が襲ってきた。
お腹の底から何か、嫌な物が沸き上がってくるような感覚。

「ポート、まずはここから離れよう…。」

ベルは、割りと落ち着きながら、僕を別の部屋まで連れていった。


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