血の記憶




午後の晴れたいい天気の日、私はある喫茶店にいた。


初めての喫茶店に戸惑う私は周りから見たら滑稽に映っただろう。


頼んだ紅茶は温かい甘さをふくんでいて、翔真の家での香奈と祐樹のしょうもないやり取りを思いだした私の緊張は少しほぐれていた。



「…奈央ちゃん、であってるかい?」


「はい」



私の前に座っている男の人は長居さん。


あれから翔真を通して話を進め今日この日に来るようになっていた。


緊張した私に優しく微笑んだ顔はなんとなく翔真を思わせやっぱりお父さんなんだなと改めて実感する。


「奈央ちゃんは喫茶店に来るのは初めてなのか。緊張してるだろう?」


「それもありますが……話っていうのは」

「あぁ、そうか。気になるだろうね、この話は奈央ちゃんにとって良くない話なんだ。落ちついて聞けるかい?」



ゆっくりした口調からでた言葉は私に嫌な予感をさせるものだった。



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