血の記憶
それでも覚悟を決め頷いた。
ほんとは耳を塞ぎたい、アパートに帰りたい。
それでも聞かないといけないのはもう逃げれないから。
逃げても私を助けてくれる人はいないから。
「彼が、少年院に入ってから三年以上経った。もう少しで出所するそうだ」
あぁ、やっぱりそうなんだ。
重苦しい声で言われた言葉になんとなく予感はしていた。
それでもいくら心の準備をしていても
こんなにも簡単に思考は停止する。
麻痺した頭でただ手の中でゆっくり冷めていく紅茶の存在だけを感じていた。