SMIWWER


ある程度 知人同士の馴れ合いが済むと
別のグループに恐る恐る話しかけ大きなグループとなっていった


瑞波はその様子をぼうっと見ていた


何もそんなに頑張らなくても
めんどくさい


ふと静香の方を見ると知らない子と
楽しげに話している


誰にでもすぐ話しかける静香のコミュニケーション能力には感心だ


少しずつではあるが空気の緊張が
ほどけていっているのを感じる


「席につけー」


ほどけかけていた緊張が
またはしる


「担任の渡辺 一 (ワタナベ ハジメ)
といいます、さっそくだがーーー」


つらつらと単調に入学式の説明を始める


クラスメイトは緊張のなか
先生の話を一生懸命にきいている


瑞波は担任の名前を一応確認してから
窓の外に目をやった


雲ひとつない青空に桜がよく映えている


特に意味はないが退屈な話を聞くくらいなら外をみていたほうがましだ


「ね、ね!」


突然前の席の女の子が振り返って
コソコソと声をかけてきた


「入学式の後に部活動紹介って
なんか忙しいよね!」


入学式だけで帰れるんじゃないのか


「私 見川 佳奈(ミガワ カナ)!
よろしくね!」


佳奈はフフッと照れくさそうに笑った


話しかけるタイミングをうかがっていたのだろうか


「よろしく!私のことは瑞波って呼んでね」


コソコソと自己紹介を返したたが
なぜこのタイミングで話しかけてきたのかよく分からない


ササッと姿勢を戻して佳奈は満足気な様子だ


あれ
なんか違和感


「どっかで会ったことある気が…」


「じゃあ 整列して体育館に移動するぞー」


先生の一言でクラスはまたざわめきを取り戻し空気が流れ始める


瑞波の感じた違和感も空気の流れに混じっていった


気のせいか
まあ 別に大したことじゃないし


窓から春風が入ってきて教室の中を走り抜けた


新しい季節がはじまる



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