かごの中の鳥は
かごの鳥
『タスケテ……』

一葉は森の中を走っていた。
どこに向かっているかわからない。
ただ追っ手から逃れるために必死に走っていた。
行く手を阻むように、枝がシャツ1枚の一葉の身体中にぶつかって肌の露わになっている部分に赤い線が何本も走っている。
しかし、そんなことには気にしてられない。
一刻も早くここから出なくては。
焦る気持ちとは裏腹に、出口はなかなか見つからない。
それでも一葉は前へ進む。
出口を求めて。
立ち止まったら追っ手に捕まってしまう。
あんな生活を続けていくのはもうたくさんだ。
あそこは一葉にとって安息の地ではなかった。




両親が死んで、下町には知り合いが多かったから一葉1人でも生きていくつもりだった。
そんな時、斎賀家の使用人の求人広告を目にし、住み込み・3食食事付きに惹かれ応募したのが悪夢の始まりだった。

< 2 / 13 >

この作品をシェア

pagetop