星に願いを


ふわりふわり揺れるのは、先ほど美容院で染めた金色に白のメッシュが入った傷んだ髪。その髪を着ていたパーカーのフードで隠し、年季の入った廊下をひっそりと“奴”に見つからないように歩く。

そおーっと、そおーっと、ギシ、と軋んだその瞬間。



「おっ!鈴子(すずこ)!また美容院行って来たのか」


そんな声。まさにそれは見つかると面倒で仕方がない相手の声だった。見つかってしまったら、もう開き直るしかない。まるで向日葵みたいでしょう、と笑いながら振り返った。


「似合う?パパっ!」

「もちろん!…なわけあるかァァ!」


あたしの父親。通称おとん。馬鹿でアホでやたら声がデカイ。

そのおとんに首根っこ捕まえられて、ずりずりと部屋の中まで引きずられてゆくアタシ。


「あ、幸(さち)姉。どうにかしてよ」 


そこをたまたま通りかかったのが長女幸子。あたしより3つ上の御姉様だ。
 

「や、あたし出かけるから」


たすけてー、と手を伸ばしても幸子姉は無情にも玄関へとスタスタ歩いてゆく。


「幸姉!どっか行くの!?」
「ダーリンとカラオケ。」
「カラオケだとォォ!?そんな不良の溜り場に!」

いやいや、おとん。今時カラオケ小学生でも行くから。っていうか絶対カラオケじゃなくてラブホだよ。彼氏とラブラブなんだってよ、ふざんなバーロー。


「コラッ幸子!っ待ちなさい!」
「さぁてと、あたしも…」


そろりそろりとバレないように部屋から抜け出そうとすると、ガシッと再び捕獲された。


「おまえは再教育タイムだ。」

「(いや゙ー!)」



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